ステンドグラス屋のウェブサイト戦略



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少し前に、知り合いのステンドグラス工房のHPを少し修正する機会があった。

その過程で、現状のステンドグラス関係の会社のホームページの作られ方やウェブサイト戦略について、ざっと分析・考察をしたので、あれこれと思うことなどを交えて、まとめてみようと思う。

ステンドグラス関連会社のHP運営事情

Googleの検索窓に適当な語句を入れ、ステンドグラスに関係する会社・工房を、制作会社を中心に色々と見てみた。

ステンドグラス関係の会社と言っても、大手の「企業」と呼べるような会社から、個人の工房まで様々な形態で存在している。大手の会社(と言っても数十人規模だが)は、基本的にB2B(Business-to-business:企業間取引)がメインであるため、ウェブでの活動・営業は積極的に行っていない。建設会社やハウスメーカーを相手にしており、営業活動を専属で行う人員を抱えていていることが殆どだ。

一方で、個人や少人数で運営しているところはB2C(Business-to-consumer:企業対消費者間取引)がメインであるため、全くの新規顧客として、ステンドグラスに興味があったり、新たに家を建てるような個人を相手にすることになる。まあ、ほぼ個人事業主なので、企業と言う言い方は大げさだが…。

その場合、ウェブでの活動が非常に重要になってくる。ステンドグラスを入れようとする施主が、ウェブ経由で依頼先を探すことが多いからだ。

もう少し詳細に見ていく。

規模の大きなステンドグラス工房・会社

長年の経験を活かした、対人での営業のやり方が確立されており、特定の顧客との太いパイプが既に築かれている。ウェブでの顧客への訴求は、足を使った営業と違って目に見えない不確かな要素が多いく、効果が得られるかどうかが明確でないこともあり、二の足を踏んでしまうことが殆どだ。

建築会社・ハウスメーカーが相手である大規模の工房でも、施主と直接取引ができるきっかけになると考えれば、もう少し力を入れても良いのでは?と思うのだが、実際はそうなってはいない。本当は力を入れたくても余力や知識、ノウハウがないだけなのかもしれないが、実際はどうなのだろうか。

あるいは、ウェブが発達する前からの営業の仕方を、今の時代にマッチしたやり方には直ぐに変更できない、頭の固い年配の経営者がボトルネックになっているのかもしれない。。中小企業にありがちな、ワンマン経営者が、知ろうともせず興味を持つこともなければ、ウェブ戦略を進めるのは難しい。

ステンドグラスのパネルが建築物の一部であるため、ステンドグラス=建材であり、どんなに名のある工房でも、現場では下請けという形に甘んじて窮屈な思いをすることがある。施主と直接やりとりができれば、そのような事も減り、ストレスの軽減になる。

加えて、中間業者による中抜きがないため、適正価格でお客様に提供できる。利益率が上がる、コントロールが自由に効く、など、利点は非常に多いと思うのだが…。

例えば、営業の社員に支払う給料が25万だとして、ウェブサイトの構築に月に25万投資すれば、ステンドグラスを欲しがる人がまずそこを見る、というようなサイトを構築できると、個人的には思う。ただ、残念ながら実際にそう考える経営者はいないだろう。

あとは、専属の営業だけでなく、社長の圧倒的知名度、コネクションを大きな武器にしている工房もある気がしている。そんなところも、ウェブの必要性はあまり感じないのかもしれない。

小規模・個人工房

パネルの受注制作に加えて、ステンドグラス教室を大きな糧にしている所が多い。そこの生徒の多くが、ウェブ経由でやってくる。

そのような訳で、営業を勝手にやってくれる存在であるホームページ・ウェブサイトの重要度は、小規模な工房であるほど重要だと言える。工房によっては、正に生命線と言って良いほど大事なのではないだろうか。特に教室についてはその傾向が顕著だと思われる。

また、作家活動をメインにしているような工房は、自分のステンドグラスを一つでも多く世に知らしめたいと考えていることも多いが、ウェブサイトはそんな目的に一番マッチした手段である。

そんな訳で、どの工房もウェブサイトの運営には、かなりの力を入れているようである。

その他

昔からの由緒ある工房は、あまり積極的にウェブページを運用してはいない様だ。あまり営業目的でサイトを運営しなくても、書籍などで名が知られているので、ある程度勝手に仕事が入ってくるのかもしれない。

あとは、修理の仕事も多く請け負っているが、歴史的な日本製のステンドは、もう依頼先がほぼ決まっているようなものだから、黙っていても仕事は入ってくる。そんな訳で、ウェブで何かをすることを重要視していないのだろうな、という想像はつく。

あと、材料を一般向けに販売している会社は、実店舗を構えずウェブのみで販売というケースが多く、これはもう100%、ウェブだけがが頼りだったりする。

SEOの視点から見るステンドグラス会社のHP

ウェブサイトの運営に関して非常に重要な要素として真っ先に挙げられるのが、SEO(Search Engine Optimization:検索エンジン最適化)だ。これは、GoogleやYahoo、Bingなどの検索エンジンの検索結果において、より多く・上位にリストされるための取り組みの事を指す。

営利目的でウェブサイトを構築・運用する場合、このSEOが非常に重要で、この業界に限らず、一般消費者相手の企業はどこもかしこも検索順位を上げることに躍起になっている。

今度はこの「SEO」という切り口から各社のHPを見ていく。

検索上位にくるサイトとは

個人、少人数で運営しているステンドグラス工房が殆どである。

その中でも、情報量が多いサイトが上位にリストされている。ステンドグラスを紹介する文章・画像の量が多く、ブログを運営しているようなところが強い。

殆どのサイトではCMSを使用している。CMSとは、Content Management Systemの略で、ウェブサイトの構築、管理に使用されるソフトウェアの総称である。具体的なCMSの名前として真っ先に挙げられるのはWordPressだが、実際に調べた結果も、ほとんどのCMSはWordPressであった。他には、Movable Type、Tumblrなどを使っているところもあった。CMSには、SEO対策の機能が初めから組みこまれており、その強みが表れたかたちだ。

あとは、SEOを意識している、と思われるサイトが上位に来ている。これは当然と言えば当然の結果かもしれない。

上位に来ないサイトとは

無名で実績もないところが上位に来ないのは当然のことであるが、ある程度有名で実績もある工房にも拘らず上位にリストアップされない工房もあるようだ。

画像は多いが文章の量が少ないサイト、教室を運営していないので、一般人に知られることが殆どないサイトというのは、検索ユーザが少なくなりがちで、下位に止まっている。

そして、CMSを使っていない、手書きでhtmlを書いているようなサイトは、ある程度の量の良質なコンテンツが揃っていても、上位には上がってこない傾向がある。

SEOの基本

と、ここで若干話がそれるが、SEOの基本について。

ウェブサイトをより多くの人に見てもらい、それを営業につなげたいと考えた場合、最も重要なのはサイトのアクセス数だ。そのアクセス数を上げるためには、当然ながら人に知られる必要がある。

そこでSEOが重要な訳だが、そのためには、まず良質なコンテンツを用意する必要がある。良質なコンテンツが人の目にとまることによりリピートや被リンクが生まれ、更により多くの人の目にとまることよりアクセス数が増え、それで検索の上位に表示されるようになり、そしてまた更に人の目に触れる機会が増えてアクセス数が増え、・・・このような好循環が生まれた結果、そのページは検索上位にリストされる。

要は、極論、ウェブサイトは、良いコンテンツさえ揃えれば良い、それが全て、と言ってしまっても良い。SEOには、小手先のテクニックというようなものも存在するが、そんなものには頼らず、愚直に人の役に立つような情報を提供していけば、自然と検索順位は上がってくる。

迷うことがあれば、「検索ユーザーは何を求めているのか?」という基本を思い出し、王道のSEO対策を行えば良い。


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ステンドグラス屋のHPに必要なもの~これからHPを作るなら

調査結果と分析を踏まえて、ステンドグラス屋に必要なウェブサイトを、自分が新たにサイトを構築するとしたらどうする?、という観点をベースにシミュレーションしてみる。

なお、これはある程度本格的にやる場合の話で、ちょっと自分の工房を紹介出来れば良い、という場合はここまでする必要はない。その点については後述する。

必須なこと・モノ

CMSの導入というのは、ある程度のものを作るなら必須になってくる。ブログなどの動的なコンテンツを作る場合は、中でプログラムを動かすことになるので、手書きのHTML/CSSでは絶対に対処できない。具体的にはWordPressで良いだろう。

WordPressを使ったサイト構築を自力で行うのは、ITの素地があるか、余程学ぶ気持ちがあるか、などの理由がない限り、難しい。WordPressは特別な知識が無くても導入可能、と説明されることもあるが、それはごく簡単なサイトを作る場合の話だ。実際には、それでは済まない。HTML/CSSも初心者には敷居が高いが、PHPやjavascriptなどのプログラム言語の知識も多少必要になるため、外部の業者に依頼した方が無難だ。その場合、良質な業者へ制作を依頼する事が大事になってくる。

そして良質なコンテンツだ。具体的には、写真と文章になる。出来るだけ高画質で大きな写真を載せることによりステンドグラスを疑似体験してもらい、感情に直接訴えかける。そして説得力のある文章・説明により、論理的に納得して頂く。この両輪が他の何よりも大事なことを、ここに断言しておきたい。

ブログの運営は、その工房・作家のファンを増やす意味で必須と考えている。定期的にサイトが更新され情報が増えていくので、SEO的に有利、というのもある。従って、ブログだけ外部のサイト(Ameba、JUGEM、excite、Blogger、livedoor等)には、できればしない方が良い。

ブログと言うと気が重いと感じるかもしれないが、制作物やデザインの紹介、+αと考えておけば十分だ。また、ブログは定期的に更新していくことが重要であるため、その点も覚悟しておく必要がある。

できれば・・・

サイトのデザインセンスが欲しい。会社・工房はその「色」が大事。それだけでユーザは判断する。色がその会社のすべてを表していると言っても過言じゃない。

サイトのセンスが悪い工房は、十中八九ステンドのセンスも悪い。堅い雰囲気のお役所っぽい工房は、そんな感じのステンドを作る。ブログを書いているところなんかは、サイトのデザインと施工例、ブログの文章でほぼその工房がどんな感じかを判断して良いのではないか(判断できる人とできない人がいるかもしれない)。サイトのデザインは、素人には当然敷居が高い。そんな時も外部の業者に頼った方が良いだろう。

あとは、twitter、facebook 、instagramなどのSNSとの連携だ。中でもtwitterは特に大事な気がする。難しく考えることはない。サイトを更新したら自動でtwitterに流すことも可能だ。

加えて、何か一つ、+αとしてのオリジナルコンテンツがあると強い。ステンドグラスに関することで、制作技法の解説や、デザインの仕方等のノウハウ、なんてものは魅力的かもしれない。作品を販売するような機能を組み込むことも、今はそんなに難しいことではない。

これはダメ

サイト作成のスキルがないにも関わらず背伸びして自力で作ったサイト。たまに見かけるが、大抵ダメだ。イケていない。業者に頼むと一般的に最低数十万円は掛かるため、自分で作ろうとするのは分かるが…痛いほどわかるが…。

あとは、文章が殆どないサイトは、SEOの観点からかなり不利。

運用の問題として、殆ど更新されないサイトもダメだ。最低月一は更新したいところ。習慣化すれば、何らかの更新は出来るはずだ。

SEO対策のキモ

一般的に、SEOで最重要なのはコンテンツ被リンク(他のページからのリンク)、使い心地(スピード、可視性など)と言われている。

コンテンツは言わずもがなで、想定するユーザーにとって有益なものを提供するように心掛ける。繰り返すが、高画質でそそられる写真と、納得感のある文章を追求しよう。

被リンクは、良いコンテンツを作った結果、勝手に張られるのが理想である。意図的に外部のサイトからリンクを張るというのはオススメできない。

使い心地については、普通に運用していればそんなに酷いことにはならないので、完成したサイトに対してスピードテストを行う程度で良いだろう。

ちなみに、SEOの基準は一般には公開されておらず、世に流れているものは全て仮説である。Googleは検索によってユーザにより有益な情報を与えるのが会社としての生命線であるため、日々検索ロジックのブラッシュアップを行っており、その精度は日々上がっていっている。小手先の対策をしても長い目で見れば淘汰されてしまうだろう。

あとは、日々運用していくことだ。はじめだけ頑張ってサイトを作っても、更新頻度が低ければ順位は落ちていく。

小規模のサイト、スモールスタートなら

無理にオリジナルなサイトを、手間やお金を掛けて作る必要は、必ずしもある訳ではない。世の中には無料でホームページとして使えるようなサービスが多々存在する。

そのなかでも個人的にオススメなのは、Tumblrだ。…と言いつつ、私自身は使ったことがないので、自信を持ってオススメ…という程ではないが、

・たまに見かけるが、いい感じのサイトが多い。

・CMSに近い使い方ができ、ブログだけではなく、固定ページ(自己紹介に使うような、流れていかないページ)が使える。

・オリジナルドメインが使える。

・ステンドグラスのサイトとして使っているところがあり、良い感じだったから。

こんな理由で、オススメしてみた。

ブログやサイトの基本は、スモールスタートだ。先ずは無料のブログなどに登録しておき、徐々に育てていけばよい。

その先の理想、ブランディングの重要性

世間一般における「ステンドグラス」というもののイメージは、どのようなものだろうか。

ステンドグラスを作る側の立場だとその辺りがはっきりとしないが、明らかに陳腐で古臭いイメージがあるような気がしている。

ヨーロッパの教会にあるような、あまりにも高貴で手の届かないステンドグラス。日本の駅や公民館などの公共施設にある、ほとんど誰の目にも留まらないようなステンドグラス。カルチャーセンターで作る、小物やランプなどのステンドグラスもある…。

そんなイメージを払拭するような、今はまだはっきりとしないが、ステンドグラスというものの価値自体を高めるようなブランディング戦略が練れれば…、逆に、ステンドグラスの価値を下げるような行為は、出来るだけ避けていきたい。

…自分も含め、現段階では具体的なブランディング戦略というところまでは考えが及ばない人が多いと思うが、非常に大事なところなのは明らかなので、意識しておいても損はないだろう。

意外と知らない?「ブランディング」とは。


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おわりに

私はこの分野の専門家ではないが、以前、Webの制作会社に在籍したことがあり(4か月で辞めてしまったが)、また、これまでに幾つかの簡単な商用サイトを構築・運用したことがある。その経験と現状の分析を踏まえて、現時点で自分なりに思う事をまとめておきたいと思い、備忘録も兼ねて今回の記事を書いてみた。

年々、ウェブの重要性が増しているのは誰もが気付いていることかもしれない。コンテンツが充実していて最低限のSEO対策もとれており、センスの良いサイトを中・長期的に築ければ、もうそれだけで営業を1人雇うくらいの効果が出る。今はそういう時代なのだ。

新たにサイトの運用を始めようとする人にとっての一番のネックは、「文章を書くこと」だと思うが、これはもう慣れていくしかない。我慢して書き続ければ、自分なりの文章を書く「型」が出来てくると思う。慣れるまでが大変だと思うが、楽しみながらやっていけば良いのだ、気楽に考えよう。

何事も小さな一歩から。そこに少しづつ足していくことで、世の中の殆どのモノは出来ている。とりあえず、スモールスタートすることにしよう。

あと、今回はウェブ戦略の話なので敢えて触れなかったが、最も大事なのは、当たり前だが制作するステンドグラスが素晴らしいということだ。この点は肝に銘じておきたい。

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